@misc{oai:tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp:00006408, author = {カワバタ, ナミキ and 川端, 南実希}, month = {Mar}, note = {近年、「観光地を経営する」という考え方が重要視されている。日本交通公社(2013)は、観光地が持続的に発展するためには、観光地を包括的経営体として捉え、諸事業の管理運営を行うことが重要と述べている。管理運営のためには、評価指標と数値目標を設定し、その達成度を測定するという手法が主流となっているが、地方自治体においては行政評価が義務化されておらず、その導入率は2013年10月現在で59.3%となっている(総務省自治行政局2013)。そのような中、安倍内閣は2014年に地方創生政策を担う「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、「まち・ひと・しごと創生法」を施行した。これにより、地方自治体は、2015年度中に各地の実情に応じた人ロビジョンと地方版総合戦略(以下、総合戦略)の策定を努力義務として課され、各地で戦略の策定が急がれた。本戦略では、各政策分野、施策ごとにアウトカム指標を原則とした数値目標と重要業績評価指標(KPI)を設定し、PDCAサイクルで施策の効果を検証・改善する仕組みを確立することが求められている。これにより、これまで任意であった全国の地方自治体に評価が求められるようになったと言える。そこで本研究では、観光振興に力を入れていると考えられる、観光地域のマネジメントを推進する日本版DMOの候補法人登録に申請している50市区町村を対象に、総合戦略の観光関連指標の傾向を把握し、指標設定時の課題や工夫点を明らかにすることを通して、コストや整合性を考慮しつつ適切な評価指標の設定を実現するための基礎的な知見を得ることを目的とする。本論文は、6章で構成される。第1章は、研究の背景と目的、既往研究の整理と論文の構成、調査方法を記した。第2章では、まず、既往研究や文献調査から行政評価の基本事項を把握するため、評価の歴史や指標の種類を把握した。次に、本研究で着目すべき指標を抽出するため、国内外で例示・運用されている観光関連指標を整理した。その結果、観光関連指標については、世界観光機関の持続可能性指標や海外または日本のDMO等、様々な指標があることがわかった。さらに、多くの自治体が観光客数、観光客満足度、リピート率などの指標の必要性が高いと考えていることがわかった(塩谷2008)。以上から、国内外で例示・運用数が多くニーズの高い観光客数、観光客満足度、リピート率等の8指標を、本研究における「重要指標」として設定した。第3章では、国の地方創生政策の概要と総合戦略の策定状況を把握するため、国の公開資料や戦略策定の手引き、各自治体の総合戦略から整理・比較を行った。その結果、総合戦略は、自治体ごとに施策の記し方や詳細度が異なり、それに応じて評価指標の設定数も異なる傾向にあることがわかった。第4章では、観光関連指標の設定傾向を把握するため、各自治体の総合戦略から観光関連指標を抽出し、指標を性質ごとに分類した。その結果、KPIについては、抽出した433指標のうち42.6%が観光入込客数や施設来場者数などで、23.6%が事業数等のアウトプット指標であった。これらの指標は、観光施設や行政内部のデータ集計のみで数値を得られるため、設定しやすい指標だと考えられた。一方で、重要指標のうち、観光客満足度やリピート率等の4指標を設定している自治体は少ないことがわかった。これらの指標(以下、未活用4指標)は、何らかの課題があり設定しづらいと考えられるため、次章で詳細に分析することにした。第5章では、指標設定時の課題や工夫点を明らかにするため、未活用4指標を対象に詳細に分析した。対象自治体が極端に少ないことから、地域連携DMOから未活用4指標を設定している9自治体を追加して調査した。まず、着目すべき課題点を定めるため、自治体評価の課題を整理した。その結果、評価の質には予算や人員等のコストや職員の能力面の課題があり、Hatry(2006)や田中(2014)が示す指標設定時に留意すべき基準のうち、コストや職員の能力に関わる基準はデータの収集費用、妥当性、目的との整合性等であった。そこで、次章では「データの収集方法」と「指標と施策との整合性」に着目して分析した。その結果、まず「データの収集方法」については、未活用4指標は国や都府県の調査では市区町村別データが少なく、市区町村独自で調査しデータを収集していた。これらは、アンケートを行い、分析しなければ扱えないため、調査や分析の委託費、職員が分析を行う際は専門的能力が無ければ、設定が困難な指標だと考えられた。次に「指標と施策との整合性」については、指標と施策内容、指標と施策の目的等との間の整合性がとれていない例が複数あり、真に得たい結果を得るための指標や得たい結果に到達するまでの段階を踏んだ指標の設定がされていないことがわかった。この理由としては、データが無く適切な指標を設定できなかった、他の施策の指標と重複するため設定しなかった等があげられた。このことから、データの有無や指標設定に関する職員の専門的能力の度合いが「指標と施策との整合性」に関係していると考えられた。さらに、職員自らがデータ収集の調査を行い、かつ段階を踏んだ指標設定がされている志摩市に着目した。志摩市では、環境省から派遣されたK氏が中心となって職員ワークショップを行い戦略が策定され、分析対象指標はK氏の発案によって設定されていた。また辻褄が合わない部分等を見直して毎年改訂するなど、専門的な能力を持つK氏の存在によって難易度が高く整合性のとれた指標が設定されていることがわかった。以上から「指標と施策との整合性」には、データの有無や職員の専門的能力の度合いが大きく影響し、専門家の存在や職員の育成が重要だと考えられた。第6章では、総括としてデータ収集と専門的能力の観点から主な観光関連指標の設定難易度を整理し、観光政策の評価の課題と今後の展望について論じた。第4~5章より、設定難易度の高い指標は、観光客満足度やリピート率等の自治体独自にデータを収集・分析する必要のある指標であると考えられた。これらのデータ収集は、各自治体の予算規模に応じて行う方法や頻度は様々だが、分析ノウハウや評価についての専門的能力を身につけることで、委託せずに職員独自で行うことも可能になる。以上より、必要なデータを収集し、整合性のとれた適切な指標を設定するためには、分析ノウハウの教育や指標設定に関するガイドラインの作成が重要であることを示した。, 首都大学東京, 2017-03-25, 修士(観光科学)}, title = {まち・ひと・しごと創生総合戦略における観光関連評価指標の傾向に関する研究}, year = {2017} }