@misc{oai:tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp:00004363, author = {カワカミ, マサシ and 川上, 将史}, month = {Mar}, note = {近年、長期間運動が海馬神経機能を高めることが明らかにされてきている。しかし、一過性運動が海馬の生理的応答に及ぼす影響を検討した研究は少なく、また、その分子機構は未だ解明されていない。海馬神経機能を高めるものとして、海馬細胞外環境の調節に重要な役割を担っているマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-9、MMP-2)、多様な神経保護作用を有するインスリン様成長因子-1 (IGF-I)が知られており、神経活動の活性化によりMMP-9の酵素活性の上昇、血中IGF-Iの脳内移行促進がみられることが報告されている。これまでの研究から、一過性運動が海馬の神経活動を高めることが明らかにされているため、一過性運動はMMPやIGF-Iシグナル伝達を活性化させる可能性が考えられる。そこで本研究では、一過性運動が海馬MMPおよびIGF-Iシグナル伝達に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。実験では、Wistar系雄性ラットに異なる運動強度 (コントロール群: O m/min、低強度群: 10 m/min、高強度群: 25 m/min)の一過性トレッドミル走運動 (30分間)を行わせ、運動終了の直後、および6、12、24時間後に海馬を採取した。研究課題1ではMMP-9およびMMP-2の酵素活性とその内因性阻害物質TIMP-1 (Tissue inhibitors of metalloproteinases-1)タンパク発現を、研究課題2ではIGF-Iシグナル伝達の主要なリン酸化酵素であるAkt (Protein kinase B)とErk1/2 (Extracellular signal regulated kinases 1/2)の活性応答を検討した。実験の結果、研究課題1では、低強度の一過性運動終了から12時間後に海馬MMP-9の酵素活性が有意に上昇することが明らかになった。しかし、海馬MMP-2の酵素活性、海馬TIMP-1タンパク発現に関しては、全てのタイムポイントで運動条件による差異はみられなかった。これらのことは、一過性の低強度運動は海馬MMP-9の酵素活性を有意に上昇させるが、高強度運動では海馬MMP-9酵素活性にあまり影響しないことを示している。先行研究より、高強度運動ではなく低強度運動が神経新生を促進させること、また、MMP-9が神経新生に関与していることが明らかにされつつあることを考慮すると、長期的運動による海馬神経新生促進の分子基盤のひとつに一過性運動によるMMP-9酵素活性の増加が関与しており、また、その効果は運動強度によって異なる可能性が考えられる。研究課題2では、一過性運動直後において、低強度群と高強度群だけでなく運動を行っていないコントロール群でも活性型のリン酸化 Erk1/2発現が増加した。また、一過性運動による活性型のリン酸化Akt発現の変動はみられなかった。リン酸化Erk1/2発現の結果は、ラットをトレッドミルに乗せるという実験操作自体が刺激となってしまったことによるものかもしれない。また、Aktリン酸化に関しては、先行研究より刺激提示の1~2時間後に促進するという報告もみられることから、本実験で設定したサンプリングポイントではAktリン酸化の変動を捉えることができなかった可能性が考えられる。さらに、一過性運動がIGF-Iを介してErk1/2とAktリン酸化を増加させることを明らかにするためには、IGF-I受容体が活性化していることを示す必要もある。これらのことから、一過性運動によるErk1/2とAktの活性応答を検討するためには実験デザインを改善し、さらに検討する必要があると考えられる。本研究の結果から、一過性運動により海馬MMP-9の酵素活性が高まることが明らかとなった。この結果は、運動による海馬神経機能の向上に、MMP-9酵素活性を介した細胞外環境の調節が関与している可能性を示唆する。一方、一過性運動がIGF-Iシグナル伝達に及ぼす影響を解明するためには実験デザインを改善し、さらに検討する必要があると考えられる。, 首都大学東京, 2014-03-25, 修士(健康科学)}, title = {一過性運動に対する海馬の生理的応答 : MMPsとIGF・Iシグナル伝達に着目して}, year = {2014} }