{"created":"2023-06-19T12:44:13.014475+00:00","id":3631,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"72a32b53-c904-429c-b68c-02cddd31e98d"},"_deposit":{"created_by":3,"id":"3631","owners":[3],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3631"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp:00003631","sets":["521:613:615:877:1115"]},"author_link":["10465","10464","10463"],"item_2_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2013-03-25","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_2_creator_2":{"attribute_name":"著者(ヨミ)","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"フジイ, カナ"}],"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"10464","nameIdentifierScheme":"WEKO"}]}]},"item_2_creator_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"Fujii, 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これまで「食」機能に着目して農業の可能性を考察した論文は、農家によって直接経営されるレストラン(農家(村)レストラン)に関するものがある。中村ら1による研究では「メニュー」に焦点を当て、地域農産物の野菜を扱うレストランではその形態は多品目が望ましいことを主張している。またそのためには地域内の農家と連携をとる等、農産物の供給システムを構築することが重要だと述べている。また大西ら2は、農業の第6次産業化の意義について言及している。しかし、これらの研究の対象地は地方の農(山)村地域であり、都市の農地で栽培されたものを扱うレストランを対象としている研究はなされていない。また少量多品種生産について言及した研究はみられず、そこに本研究の新規性を見出している。1-1-3.研究仮説1-1-2の既往研究を踏まえ、研究仮説を以下のように設定する。(1)地産地消型レストランの定義本研究では、以下の2点にあてはまるものを「地産地消型レストラン」と定義する。・市内(もしくは市に隣接する市)の農産物を食材として概ね年間を通して使用している・市内(もしくは市に隣接する市)の農産物を使用している事、また使用する農産物の情報を来店者に積極的に提供している(2)研究仮説「地産地消型レストラン」は個人経営であることが多く、規模が小さいものが多い。したがって1日に来るお客さんの人数も限られているので使用する野菜の量は決して多くない。それに対してメニューの種類は豊富なため、豊富な種類の野菜が必要となる。したがってレストランで必要な量と種類は少量で多品種であると考える。一方、都市農業は、地方の多量少品種生産に対し、少量多品種生産が主流なため、都市における「地産地消型レストラン」に対応しやすいのではないかと考える。「地産地消型レストラン」と「都市農業」のそれぞれの望ましい役割・形態として以下のように仮説を設定する。○地産地消型レストラン・新鮮な野菜を提供する・新しい品種(農作物)の宣伝を行う○都市農業・量と品種は少量多品種である・地方とは形態の異なる多量少品種生産(例:葉もの専門とし、何種類もの葉ものを栽培している等)1-2.研究目的したがって本研究では、東京郊外(西郊)の「地産地消型レストラン」と都市農業に注目し、「少量多品種」という視点からそれらの実態を詳細に明らかにすることを目的とする。具体的には「地産地消型レストラン」が求める都市農業のあり方と都市農業の現況を明確にし、課題を指摘した上で、今後「地産地消型レストラン」と農家がどのような形態で、どのような関係をもって存続していくことが望ましいかを考察する。1-3.研究の方法本研究では、東京郊外(西郊)のうち「東京都小金井市」を対象地とし、小金井市で行われている先進的かつ特徴的な事業を切り口に、出来るだけ多くの地産地消型レストラン、農家に対してヒアリング調査を行い、実態を把握する。そして実態から浮かび上がる課題を整理し、最終的に「地産地消型レストラン」と農家の最も望ましい形態の立案を行う。1-4.論文の構成2.東京郊外(西郊)の都市農業と地産地消型レストランの現況2-1.東京郊外(西郊)の都市農業の現況東京郊外(西郊)おいて耕地(農地)面積は年々減少してはいるものの決して無視できない量の農地が残存している(4301ha:2011年時点3)。農地が減少する主な理由として農業従業者の死亡による相続税の支払い、また後継者不足等があげられる。そして主な農地転用の用途として住宅が上位にあげられ、他には駐車場、公的施設、店舗等に転用される例がみられる。残存する農地に対し、各市町村毎に市民農園や農業体験農園、学校農園、ファーマーズマーケットなど、様々な取り組みがなされている。三多摩の農業産出額の上位はトマト、日本なしである。2-2.小金井の都市農業の現況小金井市は、東京都のほぼ中央、武蔵野台地の南西部に位置し、都心から約25km総面積11.33km2の市域を有している。地形は、武蔵野河岸段丘の境である国分寺崖線(通称「はけ」)によって、南北で高低差が15~20mもある特殊な地形が特色である。その特色から江戸時代には六上水のひとつである玉川上水が完成すると、新田開発が相次ぎ、急激に集落が発達した。かつて米、小麦、茶、酪農等の生産が行われてきたが、都市化の進展により農地や緑が減少した。しかし、消費者二ーズの変化によって、野菜、果樹、花き、植木を主体とする農業生産へと移行した。平成22年時点で、農地面積は平成17年に比べ約8ha減少しており、内6haは生産緑地である。また平成20年の農業産出額の上位はトマト、日本なし、コマツナ、ナスであり、野菜の栽培面積の上位はコマツナ、ジャガイモ、ダイコンである4。2-3.東京郊外(西郊)の地産地消型レストランの現況東京都では平成22年より「とうきょう特産食材使用店・登録制度事業」を行っている。これは東京都の食材を使用している飲食店の登録を行うもので、それらの店舗、使用地場野菜等の情報は冊子となって公開されている。これに登録されている23区の店舗は主に東京郊外(西郊)の野菜を使用しており特に八王子市、三鷹市、狛江市産の使用が多くみられる。それに対し、東京郊外(西郊)の店舗においては、主に市内で採れた地場野菜を使用している。2-4.小金井市における地産地消型レストラン、農家、その関係の現況・課題小金井市は市の面積に対する農地面積の割合(7.1%)、また生産緑地指定率(83.9%)ともに東京郊外(西郊)の中で中間的な値を示している(平成23年4月時点5)。またその生産緑地は市内全域に点在し市街地(宅地)と農地が混在している。以上、都市農業との共存という観点からみた場合、小金井市は東京郊外(西郊)都市を象徴する1つのモデルとして位置づけることができよう。小金井市の「地産地消型レストラン」の多くはまずJAや市内の直売所に行き、足りない分を地元スーパーや市外の直売所・ファーマーズマーケット・市場などで購入している。そして特定の野菜に限って市内農家と契約している例も見られる。一方小金井市農家で栽培された野菜はJAや直売所に留まらず、市内外のスーパー、飲食店、学校給食に出荷されている。最後に、小金井市は直売所マップやレシピ集の作成、農業祭においてはJAと連携をとっている。図1は小金井市の「地産地消型レストラン」、農家、またそれに関わる個人・団体の関係を図式化したものである。3.小金井市の地産地消型レストラン(以下レストラン)の実態3-1.小金井市の取り組み小金井市は平成20年より「江戸東京野菜秋の黄金丼フェア(以下黄金丼フェア)」を開催している。これは地域資源活用プロジェクト6の一環で行われ、江戸東京の「衣・食・住」が楽しめるまちとして新たな都市型観光の魅力を創出し、地域活性化を図ることを目的とするものである。このフェアは、秋の江戸東京野菜の収穫時期に合わせて市内の飲食店舗、農家と連携し、江戸東京野菜を使った丼メニューの料理の販売を2週間以上行うもので、それにより江戸東京野菜を通じて小金井の魅力をアピールしている。現在市内7件の農家が江戸東京野菜を栽培している。このフェアでは、農商コーディネーター(外部のコンサルタント会社)が仲介に入り、農家と飲食店それぞれの意見の調整を行っている。3-2.小金井市の地産地消型レストランの現況これらのフェアに参加しているレストランのうち、本研究の定義に当てはあるレストランを選出し(12件)ヒアリング調査を行った。その所在地を図1、概要を表1に示す。この内1件のみ東日本大震災以降地場野菜の使用を控えていた。まず地場野菜を使う理由としては新鮮であることが上位にあがった。次に値段について一部安いという回答が得られたが、一般的に地場野菜は通常のスーパーでの販売価格より若干高く販売されている。一方、知り合いの農家から仕入れている場合はあまった野菜を無料で仕入れるケースがみられる。次に仕入れ先についてはJAだけでなく、知り合いの農家や直売所で購入している例が半分ほどみられる。しかしJAでは購入せず、農家や直売所を主な仕入れ先としている例は2件のみである。その要因としてJAまで遠い等JAまでの距離の問題と、JAや直売所の開店時間と合わないなど時間の問題があげられる。3-3.地産地消型レストランの現況の類型更に、これらの事例のうち毎日営業し、かつランチ営業を行う地産地消型レストラン6件を選出しそれぞれの詳細をまとめたものが表2、その所在地を図1に示す。これら6件の「地産地消型レストラン」の形態について表3の通り設定した条件により類型化し2012年の6~8月を焦点に当て分析を行った。分析結果は以下の通りである(表4)。ただし「使用野菜の種類・量」については、表より6件すべて少量多品種型とする。3-3-1.分析結果レストラン1は一年中シチューをべースとしたメニューを提供しているが、季節に応じて使用する野菜の種類が変わるのでメニュー半固定型である。個人経営で、席数も10席と少ないためご主人がオーナー・シェフ・従業員の役割を担う3役型である。レストラン2は個人経営で同じく3役型だが、JAに足を運び、その都度ある野菜を使ってメニューを決めているのでメニュー変化型である。レストラン3は年間通して地場野菜に加え旬の江戸東京野菜を提供している。2種類のお弁当があるがメニューは煮物をメインとし、他の内容が季節毎に変わるのでメニュー半固定型である。個人経営で、小金井市内の主婦2~3人がシェフと従業員の役割を担っておりオーナー独立型である。レストラン4のメニューは1品のみでオペレーションの都合上ドリアをメインとし、その他季節のおかずとスープが付くのでメニュー半固定型である。個人経営で1人がオーナーとシェフの役割を、もう1人がシェフと従業員の役割を担っており、役割混合型である。レストラン5は2つの決まったメニューを提供しておりそれぞれ季節野菜を使ったお総菜、キッシュをメインとするのでメニュー半固定型である。個人経営で、自宅の1階を改装して営んでいる3役型である。レストラン6は2つのメニューを提供しており年間通して同じ種類の野菜を使用しているのでメニュー固定型である。しかし季節によって過剰に採れた野菜を使用するメニューがその都度作成される場合もある。市と商工会によるアンテナショップであり、1階では野菜を含めた小金井産の商品を販売、2階がレストランとなっており、オーナー・従業員・シェフがそれぞれ存在する3役独立型である。3-3-2.まとめレストランはメニュー固定型とメニュー半固定型、メニュー変化型の3つに分けられる。レストラン6のように個人経営ではない場合は容易にメニューを変えられないためメニュー固定型になったと考えられる。メニュー半固定型は更に2つのタイプに分けられ、常時出す1品(煮物、ドリア)を決めておいて他のメニューを季節に応じて対応するものと、シチューやキッシュというメニューは変わらないが使用する野菜の種類が変わるものがある。また、1人が何役か担う経営形態の方がメニューの柔軟性は高まる傾向がある。4小金井市の都市農業の実態4-1小金井市の都市農業の現況の類型小金井市の農家の中で主にJAやスーパーへ出荷している農家15件にヒアリング調査を行った。15件の農家それぞれの概要、特徴をまとめたものが表5~6、各事例の所在地を図1に示す。これら15件の都市農業の形態について表7の通り設定した条件により類型化し「地産地消型レストラン」同様、2012年6~8月に限定して分析を進めた。地方の農業に比べ都市の農業は少量多品種生産である。しかし一概に少量多品種生産といっても農家により様々なケースが存在する。したがって「少量多品種生産」をさらに7つに分類し分析を行った(表8・図2)。4-1-1.分析結果農家1は小金井市の15aの畑では直売所・レストラン用に。一他一市の5haの畑ではJA・スーパー出荷用に栽培を行っているためJA・直売所・レストラン型である。また主に伝統野菜、イタリア野菜を15種以上栽培しているので多量超多品種型である。農家2は13棟のハウスを使って1年中コマツナのみを栽培しているので多量少品種型である。またそれらをJA、学校給食、市場、レストランに出荷しているのでJA・スーパー・市場・レストラン型である。農家3は主にJAと市内スーパーに出荷しているのでJA・スーパー型である。30aの畑で、ナスを得意分野とし全体としてはサラダ系の野菜を6~7種類栽培しているので少量多品種型である。農家4は主にJAと市内スーパー、レストランに出荷しているのでJA・スーパー・レストラン型である。40aの畑で確実に収益につながり需要のある野菜8種類を栽培しているので少量多品種型である。農家5は主にJA、直売所、学校給食、レストランに出荷しているのでJA・直売所・スーパー・レストラン型である。40aの畑で主にハーブ系の葉ものやルバーブを中心に15種類以上栽培しているので少量超多品種型である。農家6は主に直売所に出し、あまりをJAに出荷しているのでJA・直売所型である。40aの畑でブルーベリーを中心に近所の方が使えるような野菜8種類を栽培しているので少量多品種型である。農家7は主に直売所に出しているので直売所型である。50aの畑でブルーベリー、ブラックベリー、キウイ等の果物や夏野菜を合わせて15種類以上栽培しているので少量超多品種型である。農家8は主にJA、直売所、生協、レストランに出荷しているのでJA・直売所・スーパー・レストラン型である。50aの畑でルバーブや伝統野菜を始め15種類以上栽培しているので少量超多品種型である。農家9はJAには出荷しておらず市内外スーパー、学校給食、レストランに出荷しているのでスーパー・レストラン型である5棟のハウスを使って主にコマツナとトマト、キュウリを栽培しているので多量少品種型である。農家10は主に直売所に出しているので直売所型である。80aの畑にウコン、ショウガ、クルミなど珍しいものを始めとして夏野菜など10種類程栽培しているので少量多品種型である。農家11はJA、スーパー、学校給食に出荷しているのでJA・スーパー型である。200aの畑の半分以上がイモ類、一方アスパラやミョウガ、ニンニクなど珍しい野菜も栽培しており7~8種栽培しているので中量名品種型である。農家12はJA、直売所、市内外のスーパー・レストランに出荷しているのでJA・直売所・スーパー・レストラン型である。1haの畑に普通の野菜に加え伝統野菜、果物など20種類以上栽培しているので多量超多品種型である。農家13は主に大地の会とレストランに出荷しているのでスーパー・レストラン型である。11棟のハウスを使って5種類の完全無農薬の葉ものを栽培している他、露地栽培も行っている。したがって多量少品種型である。農家14は市場に出荷しているので市場型である。1.6haの畑で栗のみを栽培しているので多量少品種型である。農家15は六本木マルシェ、市内外スーパー、学校給食、レストランに出荷しているので直売所・スーパー・レストラン型である。2haの畑で夏野菜始め、人参・大根などの根菜類を中心に40種類以上栽培しているので多量超多品種である。4-1-2.まとめ小金井市の都市農業は5つのタイプに分けられる(表8・図2)。まず、栽培している野菜の種類が5種類未満の農家4件中3件は主に葉ものを栽培している。葉もの栽培は短期間で大量に栽培できるので農地面積に限らず(1)多量少品種型とする。残りの1件は栗のみを栽培している。次に、農地面積100a未満で5種以上栽培する農家は、(2)少量多品種型と(3)少量超多品種型の2つのタイプに分けられる。(2)少量多品種型は更に、スーパー出荷をメインにする農家と、主に近所の方が使える野菜を少量ずつ栽培する農家の2つタイプに分けられ、前者は、農家によって売りにしている野菜が異なり、収益を上げている。(3)少量超多品種型は主に直売所向けに1~5aずつ違う品種を栽培している。最後に、農地面積100a以上で5種以上栽培する農家は、(4)中量多品種型と(5)多量超多品種型の2つのタイプに分けられる。(4)中量多品種型の1件はあまり手のかからないイモ類をメインに栽培し、少量ずつ他の種類の野菜も栽培している。(5)多量超多品種型は規模が大きくても多品種栽培している。種類が非常に豊富でスーパーのみならず積極的にレストランに出荷を行っている。全体を通して、同じ農地面積でも作業人数が多ければ多品種になる傾向がある。5.今後のレストランと都市農業の連携の可能性3と4で「地産地消型レストラン(以下レストラン)」と「都市農業」それぞれを類型化し分析を行った。この分析結果に基づき、本来ならば「少量多品種型」の「地産地消型レストラン」に対し「多量少品種型」以外の農家であれば対応できるはずである。しかし、実際には上手くそれらはマッチしていない。その理由の1つとして、そもそも「地産地消型レストラン」と農家が交流を持つ機会がないということがあげられる。しかしそれだけではなく次のステップとして実際にレストランと農家が契約に至るまでには様々な課題を乗り越えなければならない。本章ではそれを整理し、考察する。5-1.課題抽出まずマッチングするうえで発生する課題を整理する。再度ヒアリング調査を行い「地産地消型レストラン」が農家に対して抱く認識、逆に農家が「地地消型レストラン」に対して抱く認識を項目別に表9にまとめた。●出荷計画について農家1以外は手間がかかる等といった理由で作成する必要がないと考えている。それを見かねたレストラン6は毎日の入荷状況を見ながら自ら作成していた。しかし、本来は毎年の出荷状況を把握している農家側が作成すべきであると考える。●供給(量)量については、農家側は一貫して「レストランで使う量は少ない」との認識を持っており、実際にレストランで使われる量は少数なため、量的には十分小金井市の農地だけで賄えると考えられる。●供給(種類)・物理的な理由と手間に関するものレストラン6件中4件が料理の配色を考慮すると常時欲しい野菜としてあげたニンジンについては天候に左右されやすい・発芽しにくいといった物理的な理由と雑草が多いなど手間に関する理由があげられた。一方レストラン側が時々は使うが毎日使うものではないと述べているタマネギやイモ類は安定して揺れやすく量も多量にできる。これらは比較的栽培に手がかからないが種まきから収穫まで時間がかかるゆえに値段が安いので都市農業においてもあまり好まれず栽培している農家は少ない。・機械の有無100a未満の農地面積は機械を使う程でもないが手作業だと手が回らないという中途半端な大きさである。一方100a以上のほとんどの農家は機械を所有している。農家13では以前は葉ものとゴボウの相性が良いためゴボウを栽培していたが、葉ものとゴボウそれぞれの機械が必要になるため、葉もの栽培のみに切り替え年収1000万円を稼いでいる。・ハウス栽培レストランに安定供給するにはハウス栽培でないと対応しにくいという課題がある。レストラン6のようにメニュー固定型の場合は天候にされずに安定して野菜を供給する必要がある。したがって、そのようなレストランには特にハウス栽培農家との契約が欠かせなくなる。ハウス栽培の代表例は葉もの類とトマト、キュウリである。小金井市でもこの3つを栽培しているところは多いが、レストラン側はこれらをあまり必要としていない。・回転率が早いもの、収益率一般的に都市農業では限られたスペースの中で多量栽培できる回転率の高いもの且つ収益率の高いものが好まれ、その代表例がコマツナを代表とされる葉もの、夏野菜であればナス・トマトである。小金井には葉ものをメインとする農家は多い。このような農家では余剰分をレストランヘ出荷している。またナスは7~11月まで収穫でき1本に100個以上実がなり、農家3が利益を出している。・珍しい品種を栽培することへの抵抗地方の多量少品種に対抗し、都市農業では珍しい品種の野菜を栽培する農家は多く存在する。そしてレストラン側も山菜など珍しい品種を必要としている。しかし農家側は「売れるまでに時間がかかること」「宣伝をしないと売れないこと」を課題としてあげている。したがって農家1では直売所に野菜のレシピを置いて珍しい野菜への興味・関心をひくための工夫をしている。●価格レストラン側からは直売所の値段(100円前後)という二ーズがあるが、農家側からは以外にも値段の二ーズは少なく最初に値段も大事と打診した上で、だが愛情を込めて栽培した作物が売れずに残ってしまうのだけは避けたいという意見が多くあがった。●配達レストラン側からの販売先が近くにあって欲しい・自転車で行ける距離が良いという意見に対し、農家側はレストランで必要な少量の野菜の配達は難しいと述べている。●時間の制約諸事情により自宅と畑が離れている農家が存在する(農家1,3,6,15)。畑に保存場所がない場合レストランのオーナーが野菜を引き取りに来る時間に畑にいなければならないという時間の制約が発生する。したがって自宅と畑が離れていない方が時間の制約がなくて済む。●伝票整理現時点では伝票などの事務作業はJAやスーパー等販売先が請け負っており、農家側は助かっている。実際に伝票を書いているのは農家15のみである。5-2.考察5-1を踏まえ、「地産地消型レストラン(以下レストラン)」と「都市農業」の最も望ましい形態の考察を行う。(ここでは個々の形態を示すので「都市農業」ではなく以下「農家」とする)レストランと農家のそれぞれの要求をより多く満たせる状態が最も望ましい関係だと考える。以下2つの形態を考察する。形態1「レストランは、小金井市で採れる珍しい品種の野菜を使用して調理し、提供する。農家はレストランの要求に応えられるような品種を栽培する」農家側のメリットとしては地元野菜の宣伝になることがあげられる。レストラン側のメリットとしては珍しい野菜の種類が豊富に使えるということがあげられる。デメリットとしては、レストラン側が要求する(ニンジンを代表する)色のある野菜が必ずしも栽培できるとは限らないことがあげられる。形態2レストランは、それぞれの農家の特徴をつかみ、農家が得意とする分野の野菜を使用して調理し、提供する。農家はそれぞれの得意分野とする野菜の質をあげることに専念する」農家側のメリットとしては、得意分野以外の野菜は栽培しなくていいことがあげられる。しかし、デメリットとしては「出荷計画」を作成し、レストランヘ情報提供しなければいけないことがあげられる。レストラン側のメリットは、それぞれの農家が得意分野とする質の良い野菜を使用できることである。しかし、デメリットとして、それぞれの農家で得意分野とする野菜の種類が重なっていたりすると、偏りができるため、レストラン側が使える野菜の種類が限られてしまうことがあげられる。6.まとめ6-1.まとめ本研究では東京郊外(西郊)の都市農業、地産地消型レストラン(以下レストラン)の概況を把握した上で、小金井市における都市農業とレストランの実態を詳細に明らかにした。そして、実態をそれぞれレストランはメニューの柔軟性によって3種、都市農業は栽培野菜の種類と量によって5種に類型化することができた。そしてマッチングするうえで発生する課題を整理した上で、今後のレストランと都市農業の連携の可能性を考察した。6-2.結論レストランの求める都市農業の経営形態をみると色のある野菜を始めとする多品種栽培が必要とされているが天候、または作業人数、広さによって都市農業で栽培できるものはおのずと限られてしまう。しかしそのような中でもレストラン側にとっては、あまり必要とされていないが、ハウス栽培、特に葉もの類であれば安定供給が可能であることがわかった。6-2.今後の課題そもそも地産地消型レストラン側と農家側が交流する機会が少ないことがあげられる。現状ではレストラン側が農家へ直接足を運び、逆に農家側がレストランヘ足を運ぶことで徐々に交流が増え交渉に至っている。今後このような交流は積極的に増えて行くべきである。本研究対象の地産地消型レストランは当然ながら農地がなければ成り立たない。しかし現在指定されている生産緑地は「旧生産緑地」は指定から5年又は10年、「新生産緑地」は指定から30年経過後(平成34年(2022年))にその指定が解除される。したがって今から10年後以降どう農地を残していくかが今後最大の課題である。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_2_description_5":{"attribute_name":"内容記述","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"首都大学東京, 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