@phdthesis{oai:tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp:00003459, author = {チンバヤル, ツェレンバト and Chinbayar, Tserenbat}, month = {Sep}, note = {モンゴルでは1989年の市場経済化によって、観光産業を独占してきた国営旅行社が1990年に民営化された。このことを契機に、モンゴルの伝統文化が見直され、遊牧民の生活文化は観光資源として再評価されるようになった。特に、ゲルキャンプツーリズムの観光形態が発展し、遊牧民の生活体験が主要な観光プログラムとして注目されるようになった。そこで本研究は、モンゴルのゲルキャンプツーリズムの諸相を実態として網羅的に把握することを第1の目的とし、さらに地域活性化への関与が最も期待される小規模ゲルキャンプツーリズムと遊牧民の生活文化との関係性を明らかにすることを第2の目的とした。1990年以前は、ゲルキャンプ場はモンゴル国内で3か所に立地するにすぎなかった。しかし、市場経済への移行にともなう国営旅行社の民営化を契機に、民間の旅行会社が増加し、モンゴルにおける観光客の受け入れ基盤が急速に発展するようになった。そのため、来訪する外国人観光客数は2007年に約49万人を超えるようになり、ゲルキャンプ場も2008年までには300か所以上に立地するまでになった。モンゴルにおける2010年のゲルキャンプ場の分布状況をみると、ウランバートル周辺の中央県に最も多くゲルキャンプ場が分布し、次いでその周辺のフブスグル県、アラハンガイ県にゲルキャンプ場が多く立地していることがわかる。ゲルキャンプ場を規模別に概観すると、キャンプ場内のゲル数が10棟以下の小規模ゲルキャンプ場は全体の52%を、11棟から30棟以下の中規模ゲルキャンプ場が全体の38%を、そして31棟以上の大規模ゲルキャンプ場が全体の10%を占めていた。つまり、モンゴルのゲルキャンプ場において、最も多く卓越するのはゲルの棟数の少ない小規模ゲルキャンプ場である。10棟以下のゲルで運営を行っている小規模ゲルキャンプ場は、遊牧民が実際に生活で利用するゲルとほぼ同様のものを宿泊施設として利用していた。このようなゲルの組立や移動は大規模・中規模のゲルキャンプ場のゲルと比べて容易であり、観光客もゲルの組立や移動を手伝うことができた。また、小規模なゲルキャンプ場では、遊牧民の生活文化を身近に体験することができ、観光客は遊牧民と直接コミュニケーションを取ることもできる。このように、遊牧民の生活文化を体験できる観光のプログラムは、小規模ゲルキャンプ場の特徴ともいえる。そこで、モンゴルにおけるゲルキャンプツーリズムの発展と遊牧民との関わりをより詳細に把握するため、小規模ゲルキャンプ場の典型的な事例として、アラハンガイ県・ウギー湖のゲルキャンプツーリズムを調査研究した。本研究で明らかになったことは、アラハンガイ県・ウギー湖に立地する小規模ゲルキャンプ場は、リゾート地や別荘地などの観光資源に多くを依存している大規模・中規模ゲルキャンプ場とは異なり、遊牧民の生活文化に基づくプログラムと自然や文化などの地域資源とを組み合わせて観光客を誘引している。言い換えれば、小規模ゲルキャンプ場は地域固有の自然環境としての草原に、遊牧民の日常生活で行っている乗馬や乳製品加工などを体験プログラムとして組み合わせることで多くの観光客を引きつけてきた。ウギー湖の小規模ゲルキャンプ場では、遊牧民の夏営地とゲルキャンプ場の設置場所が重なるため、遊牧民の生活文化が身近に体験できる。また、放牧地を定期的に移動する遊牧民は、草原の資源と共生する環境保全型の生活様式を実践している。そのため、小規模ゲルキャンプ場の環境資源利用は一般的なホテルや大規模・中規模ゲルキャンプ場のそれと様相を異にしている。それは、小規模ゲルキャンプ場以外の宿泊施設が草原の自然環境を改変して立地しているためである。他方、小規模ゲルキャンプ場は草原に分布し、遊牧民の居住用のゲルを宿泊施設として使用している。実際、小規模ゲルキャンプ場の宿泊施設は、冬期に解体して景観を元の草原に戻すという遊牧民の環境保全型の生活様式に基づいて立地している。さらに、小規模ゲルキャンプ場は植生への負荷による環境劣化を避けるため、ゲルを1か所に常設して長く留まることはない。したがって、小規模ゲルキャンプ場は定期的に移動するなどの環境保全に対する仕組みがあり、その環境保全の意識を観光客に啓蒙することもゲルキャンプツーリズムの大きな役割の1つになっている。また、小規模ゲルキャンプ場では、遊牧民の生活文化そのものを観光資源として生かし、収入源としていることが特徴になっている。これは、遊牧民がゲルキャンプ場の経営に参加することによって、遊牧以外から貴重な現金収入を得ることができることを示している。つまり、小規模ゲルキャンプ場は大規模・中規模ゲルキャンプ場よりも地域の遊牧民に経済的な波及効果をもたらしており、その地域活性化への貢献も大きことが本研究で明らかになった。以上に述べたように、アラハンガイ県・ウギー湖に立地する小規模ゲルキャンプ場の事例は、小規模ゲルキャンプツーリズムが自然環境と遊牧民の生活文化を保全しながら地域の社会・経済を維持するため、モンゴルにおける持続的な観光の基本モデルとなりうることを明示している。今後、モンゴル各地において、自然環境と遊牧民の生活文化を活かした小規模ゲルキャンプ場が盛んになることで、遊牧民の生活水準が向上し、その伝統的な生活文化が維持できることも本研究で確認することができた。, 首都大学東京, 2014-09-30, 博士(観光科学), 甲第427号}, school = {首都大学東京}, title = {モンゴルにおける小規模ゲルキャンプツーリズムの発展と地域活性化に関する研究 : アラハンガイ県・ウギー湖のゲルキャンプの事例として}, year = {2014} }